TCFD提言とは?

TCFD提言とは?
ESG投資重視によって求められる「環境配慮のエビデンス」

以前解説した「RE100・REActionとは?」でも話題に挙げた「ESG投資」という考え方。ESG投資とは?

「E=Environment(環境)」を主軸の1つとした新たな投資判断基準は、企業に明確な「根拠」「証拠」を提示する事を迫っています。
「当社は環境に配慮した事業活動を行っています」と言っても、根拠がなければ投資家には評価してもらえません。 場合によっては「グリーンウォッシュ(うわべだけの環境配慮)」とみなされる恐れもあります。
企業価値を高めていく為には、相応の「エビデンス=根拠」も必要とされているのです。

無数にある根拠を求める枠組の中でも、特に気候変動リスクと金融に焦点を絞って、企業に気候変動関連の財務情報(=根拠)の開示を求めている国際組織が「TCFD」です。 TCFDが提唱する「TCFD提言」は、金融市場におけるグローバルスタンダードとなりつつあり、日本でも提言への対応が義務化される流れとなっています。
とても大きな、遠い世界の物事の様に思えるかもしれませんが、後述の通り中小企業も無縁とはいえません。 今後知らなかったでは済まない状況が迫ってきているのです。

今回のコラムではそんなTCFD提言について、TCFDという組織、提言の内容、どう向き合うべきか、について解説していきます。

TCFDとは?

2015年に制定されたパリ協定。 気候変動が将来的に経済活動に深刻な影響を与える、という共通認識の元、世界が温暖化防止を強く意識した1つの結果です。
TCFDとは、 このパリ協定を背景として、 G20の要請のもと金融安定理事会(FSB)が主導となって設立した、気候変動に関わる財務情報の開示を求める国家横断型の民間組織です。
「TCFD」は略称であり、正式名称「Task force on Climate-related Financial Disclosures」の頭文字を取っています。
日本語では主に「気候関連財務情報開示タスクフォース」と言い換えられています。

TCFD提言とは?
 Task force    = タスクフォース。特定の課題解決を目的とした集団
 Climate-related = 気候に関連する
 Financial    = 財務的な
 Disclosures   = 開示

G20各国の金融市場を中心とした民間メンバーで構成され、企業に対し、投資家に適切な投資判断を促す為の気候関連財務情報を開示させる事を目的としています。
このTCFDが企業へ開示させる内容の骨子を明文化したものが「TCFD提言」と呼ばれ、この提言に沿った情報開示が推奨されているのです。

TCFD提言

TCFD提言とは、TCFDが2017年6月に最終報告書として示した、企業へ求めていく気候関連財務情報の開示基準を指します。

気候関連財務情報の開示は「全ての企業」が対象、一般的な年次財務報告等を報告媒体としています。
分析・開示項目は、大分類として4つの基礎項目に分けられ、各項目に小分類が存在します。
4つの基礎項目の概要は下記の通りです。

【ガバナンス】 最重要項目。気候変動のリスクを企業経営陣がどう捉え、評価・監督しているかを示す。
【戦略】 気候変動のリスクが事業・財務等に及ぼす影響を、短・中・長期に分けて分析し対策と共に示す。
【リスク管理】 気候変動リスクに対する企業の認識を示す。それを企業のリスクへどう落とし込んでいるかも含む。
【指標と目標】 上記含めた分析にどのような指標(一例:Scope1/2/3)を用いるか、及び目標値を示す。TCFD提言の概要

この概要だけだと具体性にかけるので、例として、ガバナンス・戦略項目に対する取り組み例を挙げましょう。

例〈ガバナンス項目に対する取り組み〉
・社内に気候変動対策委員会を設け、半期1回以上の定期報告を行う。
・取締役会を監督組織とし、取締役会は報告内容を精査する。
・委員会は代表取締役を委員長とし、半期に1回以上、気候変動が自社事業に及ぼすリスク評価する。
・また、顕在化したリスクが自社の計画・予算・目標等に及ぼす影響を、最小化する為の対策を議論する。
・2022年度、取締役会及び株主に承認を得て、上記体制を構築した。

例〈戦略項目に対する取り組み〉
気候変動リスク分析において、気温上昇が2℃未満と4℃以上の2シナリオにおいて、自社事業への影響を分析する。
以下は顕在化したリスクと、検討された対策の一部。
・食品事業:気温上昇による原料農作物の収穫量減少、それに伴う原材料価格高騰
  →対策:サプライヤーとの協働開発に取り組み、気候変動耐性の高い品種改良を進める
  →対策:将来的なサプライヤーの新規育成を図るべく、農業従事者の増加に向けた支援を行う
・運輸事業:気温上昇抑制目的税(≒炭素税など)の導入、あるいは増税による、燃料費高騰
  →対策:運搬車両の電動化を進める。2030年には全車両を電動化する。
来年度は検討事業範囲を拡大し、シナリオ分析を進め、さらに対策を決定する。
なお当シナリオ分析は、国際エネルギー機関(以下、IEA)策定の気温変動シナリオを基礎とする。

概括すれば、気候変動を中心とした、企業の周辺環境が「どうなっていくのか」を推測し、「自社がどうしていくのか」を検討し、企業としての「意思を統一」する。という一連のプロセスを、社会全体に開示するというイメージになるでしょうか。

開示するそもそもの目的は、前述の通り「投資家に適切な投資判断を行わせる」為です。
TCFD提言に沿った情報開示は、金融市場全体からの要請と考えてよいでしょう。
提言に準拠していない企業に対する金融市場の見方は、今後ESG投資志向の高まりに反比例する形で、厳しいものになっていくであろうことは想像に難くありません。

TCFDは中小企業にとっても遠い話ではない TCFD提言への準拠が義務化?

TCFD提言に沿った財務情報開示は、既に各国で義務化の流れとなっています。
既に義務化の期限を発表した国もあれば、予定だけの公表に留める国もあり、その足並みは十人十色といった様相です。

日本では、2022年4月の東証市場区分の再編で誕生する「プライム市場(≒旧東証一部)」において、実質義務化の予定となっています。
スタンダード市場・グロース市場においては、義務化を検討中という段階ではありますが、プライム市場での義務化という流れを鑑みれば、段階的に導入されていくことが予想されています。東証市場再編に伴う新区分

この流れは、近い将来に様々な規模・地域の金融市場に波及していくと思われます。
資金調達を円滑に進め、ステークホルダーから良好な評価を得ないと企業価値は上がらず、持続的な成長は望みにくいという事は当たり前のこと。 その中でも、気候変動リスクへの向き合い方や脱炭素取り組みといった、環境重視の観点が大きな地位を占める時代に来ているのです。

しかし、「まだまだ、これは大企業にしか関係ないだろう」と思った方もいらっしゃるかもしれません。 が、これは正しい判断とは言えないと考えます。
前項で述べた、基礎項目の内「指標・目標」の一例として「Scope」を挙げました。 これは「自社の事業活動がどれだけ二酸化炭素を排出しているか」を算定する考え方です。 注目すべきは、「自社の事業活動」の対象が原料調達時の輸送やユーザーの廃棄時も含めた、サプライチェーン全体を想定したScope3です。
皆様の直接取引先、あるいはその先の間接取引先の企業が、もしTCFD提言に準拠しようと考え指標としてScope3を用いるとしたら。
仕入れ・販売先も含めた全体の二酸化炭素排出削減を行うことが大きな目標となります。
その検討時に、TCFD提言に準拠していない、それどころか存在すら知らない、という様なサプライヤーと取引したいと思うでしょうか。
金融市場からの見方がどうか、という以前の問題、顧客の喪失に繋がってしまうリスクがあることはご理解いただけるでしょうか。

とはいえ、TCFD提言に準拠した情報開示体制の構築が、事務的な負担が大きい事も理解されており、企業規模に応じた段階的な開示体制の構築も認められています。 今すぐではないにせよ、早い段階から先を見据えた対策を考えてみる事をお勧めします。
次項では、今できることはなにか、身近な事例をいくつか挙げてみましょう。

今できることはなにか? 中小企業のTCFD提言との向き合い方

ここまで、TCFDという組織やその提言、重要性について述べてきました。
グローバルに展開する大企業だけにしか関係するわけではないということはご理解頂けたでしょうか。

TCFDは「すべての企業」にTCFD提言の準拠に向けた取り組みを「推奨」しています。
では、今後、TCFD提言とどう向き合っていくべきなのでしょうか。

現時点での答えは比較的簡単です。前項でも述べた様に「できるところから」対策を進めればよいのです。
※実質義務化となるプライム市場上場企業は別。

ガバナンス項目で言えば、気候変動と自社の商売の関連性を「考える」委員会や部会を設立する、これだけでも一歩前進です。

その部会の定例打合せで、例えば「10年後に気温〇℃上がったらどんな事が起こりうるか」「そうなったら自社の商売にどんな影響が起きるだろうか」と議論を交わしました。 これらのシナリオ分析は、戦略項目、リスク管理項目に関わってきます。
例えば、昨今気候変動が一要因と言われるゲリラ豪雨が毎年のように被害をもたらしています。 「もし浸水したら」「もし停電したら」という可能性を挙げ、「浸水対策で止水板を導入しようか」「停電対策で太陽光発電と蓄電池を検討しようか」というのも立派なシナリオ分析と対策検討です。

「Scopeってよく分からない」と諦める必要もありません。
まず自社の事業が、どのようなエネルギーを、どれだけ使っているか、「知る」ことも指標・目標項目の入口です。
例えば、「今、電気を年間でこれぐらい使っているけど、これぐらいまで削減しよう!」というのは目標設定と言えます。
その為に、省エネ設備導入・更新計画を立てるのも、対策の1つです。

思ったよりも簡単ではないですか? あまり難しく考えすぎる必要はありません。
今大事なのは、TCFD提言のような考え方があるということを「知っておく」こと、またそれらに変革を迫られる時が来るかもしれないという「心構え」をもつこと、更にはそれらを企業内で共有することだと考えます。

結び ~日本企業の賛同状況から見るTCFD提言の重要性~

TCFD提言への賛同は世界中に広がっており、2021年時点で賛同機関総数は2300超となっています。
その中でも特筆すべきは、日本の賛同機関数は500超と、世界1位という点です。世界各国のTCFD賛同数と、日本のセクター内訳

また日本の賛同機関の特徴として、金融関連以外の非金融セクター賛同機関数が多い、という特徴があります。
企業規模も、名が知れ渡る大企業から中小企業まで、比較的幅広い規模感で参加が見られることも特徴として挙げられます。
日本市場においてTCFD提言への取り組み意識が高まっていると言え、逆説的には日本企業を取り巻く金融市場がその動きを注視している事の顕れとも言えるでしょう。
先述の義務化の流れ、日本を取り巻く金融市場の注目度合、TCFD提言の「全ての企業を対象とする」理念、いずれを取って見ても重要度は高まる一方と予測します。
日本を主な活動の場とするのであれば、今後避けて通ることはできないでしょう。

いざその時が来た、という時に慌てることがないよう、「気候変動対策にも対応した事業体制を構築しているぞ!」ということを、金融市場・サプライチェーン双方にPRできる準備を進めることをお薦めします。

その準備として、身近な例を挙げれば、省エネによる二酸化炭素排出削減、再生可能エネルギー比率の向上なども一例です。
明電産業グループは、「脱炭素経営コンサル会社」として、お客様の悩みに合わせたオーダーメイドのご提案を行える体制が整っております。 今回のコラムで触れた、「気候変動対策で企業価値を上げる」ことについて、興味やお悩みがある方はお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

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