2023年4月よりこれまでの託送料金の制度を見直し、新たにレベニューキャップ制度が導入されます。
この記事では、そもそも託送料金とは何なのか、新たに導入されるレベニューキャップ制度とはどういった制度なのかを解説していきます。
託送料金とは
託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者の持つ送配電網を使用する際に支払う必要がある料金のことです。
電気が発電されてから家庭や企業などの需要家の元に届くまでにはそれぞれ別の3種類の事業者が役割を担っています。
電気を作る「発電事業者」、電気を需要家に売る「小売電気事業者」、電気を需要家まで届ける「送配電事業者」の3つに分けることができます。
小売電気事業者が発電事業者から発電料を支払うことによって電気を買い取ります。
買い取った電気を需要家に販売するのですが、小売電気事業者は需要家に届けるための設備を所有しておりません。
そこで発電した電気を需要家の元まで届ける設備である送配電網を持つ送配電事業者に使用料を支払うことによって、小売電気事業者は買い取った電気を需要家に届けることができます。
この際に小売電気事業者が送配電事業者に対して支払う料金を託送料金と呼びます。
もともとは大手電力会社が発電、売電、送電の3つの役割をを一社で完結して行っていました。
2016年に小売電力全面自由化が行われ、電気の小売業への参入が可能となりました。
これによって市場で競争が生まれました。
それぞれの企業は電気の販売価格や付加価値などのプランで競争を行うことになります。
しかし電気を販売する際に必須となる送配電網が一つの企業で独占状態であれば競争に公平性が欠けてしまいます。
そこで2020年に送配電分離が行われて発電、売電、送電の役割ごとに分社化されました。
2022年度末までの制度
2022年度末までは「総括原価方式」という制度が使われます。
総括原価方式とは「企業経営を安定しながら電気を供給するために必要な費用」に「一定の利益」を足した金額を「総原価」とします。
その「総原価」と電気の販売による収入が等しくなるように決められた制度です。
総括原価方式は電気やガス、水道などの公共料金で採用されることが多いです。
理由は総括原価方式を採用するメリットとして経営を安定させやすいことが挙げられます。
総原価は販売による収入と等しいため、多くの場合は必要となったコストを回収することができます。
つまり事業による赤字が発生しにくくなります。
電気などのインフラ企業が倒産してしまうと国民の生活に大きな影響を与えてしまいます。
そのため総括原価方式が採用されやすいのです。
また一定の収入の見通しがあるため長期的な経営計画を立てやすくなります。
それに伴い事業者の設備投資も行いやすくなります。
一方でデメリットとして企業が経費削減の努力を怠ることが挙げられます。
企業がコストを削減しようとも利益に大きな変化は起きないため、経費を削減することによるメリットを受けにくくなります。
それに伴い他社との価格等に大きな差が生まれにくい仕組みであるため市場の競争も働きにくくなります。
さらに総括原価方式の算出方法では無駄な設備投資が起きやすいという側面もあります。
レベニューキャップ制度とは
レベニューキャップ制度とはこれまで託送料金を算出する際に採用されていた「総括原価方式」に代わって2023年4月より新たに採用される制度です。
レベニューキャップ(revenue cap)は「収入上限」を意味します。
この制度では国が一般送配電事業者の収入上限を設定し、その範囲内で自由に託送料金を設定することができます。
託送料金は以下のような流れで設定されます。
1.国が達成すべき目標事項を策定
2.一般送配電事業者が目標事項に基づき事業計画を策定
3.一般送配電事業者が必要な費用を見積もり国に提出
4.国が見積もりを審査し収入上限を承認
5.一般送配電事業者が収入上限の範囲内で託送料金を設定する
2で策定する事業計画は主に以下の5つの項目で定められます。
・成果目標、行動目標:一般送配電事業者が一定期間に達成すべき目標(安定供給、広域化など)
・前提計画 :発電、需要見込みや再エネ連系量予測 等
・設備拡充計画 :新設工事や増強工事の方針、投資数量と金額
・設備保全計画 :高経年化設備更新ガイドラインで標準化された手法に基づく更新投資、修 繕の方針、投資数量と金額
・効率化計画 :仕様統一化や競争発注等を通じた効率化取組施策
一般送配電事業者は国が示した指針に従い、上記内容を取り入れた事業計画を策定する必要があります。
レベニューキャップ制度の効果
1.コストの効率化
総括原価方式を採用している間は一般送配電事業者がコストの削減に努めても利益は一定となっていました。
レベニューキャップ制度を導入することによって収入上限から実績費用を差し引いた利益は全て一般送配電事業者のものとなります。
つまり一般送配電事業者はコストを削減すればするほど利益を増やすことができるため、コストカットの促進に繋がります。
2.費用の還元
国は設定した収入上限を一般送配電事業者が超えていないか定期的に審査します。
一般送配電事業者がコストの削減に成功した場合、その成果を翌期の収入上限に反映する形で設定します。
一般送配電事業者は前期の成果が反映された収入上限超えないようにさらにコストの削減を進めます。
これを毎期繰り返し行われることによって託送料金が低く設定され、消費者が負担する電気料金を減らすことができます。
3.設備投資の資金の確保
自然災害等の外的要因によって一般送配電事業者の送配電網の修繕等に多額の費用が必要になった場合、翌期の収入上限を見直すことができます。
これによって想定外の損失による資金不足を回避し、必要な設備投資を行うことができます。
変更後の託送料金
レベニューキャップ制度が導入されるにあたって全国の一般送配電事業者が託送料金単価の見直しを行いました。
例として東京電力パワーグリッドの見直し内容をご紹介いたします。
【見直し前後の託送料金平均単価(税抜き)】
見直し後(円/kWh) | 見直し前(円/kWh) | 差引 | |
特別高圧 | 2.40 | 2.26 | 0.14 |
高圧 | 4.24 | 3.92 | 0.32 |
低圧 | 9.02 | 8.82 | 0.20 |
引用:託送供給等約款の認可申請について
https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2022/1664516_8617.html
いずれの項目も単価が上昇するという結果となりました。
この見直しは2023年4月より反映される予定です。
2023年の4月より託送料金が上がる予定となっています。
これに加えて燃料調整単価や再エネ賦課金といった電気料金を構成する要素も単価が高騰することが予測されます。
自家消費型太陽光は電気代の削減に繋がる設備として有効な手段です。
国や自治体の補助金を活用すればお得に自家消費型太陽光発電を導入して電気代の削減・脱炭素化に繋げることができます。
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