2027年3月まで!即時償却と節税完全ガイド:空調・変圧器・太陽光や蓄電池に使えます
省エネや再エネ設備の導入に使える税制優遇制度には、中小企業経営強化税制があります。
申請期限は2027年(令和9年)3月31日(予定)です。2024年8月に経済産業省の概算要求の発表があり、申請期限の延長を要望しています。
税制優遇制度は、補助金の利用とセットで申請する企業が多いです。とくに、太陽光発電・蓄電池・空調・LED・変圧器など、初期費用がかかる設備との相性が良い制度です。
ただし申請がとても複雑で大変です。
このページでは、省エネや再エネ設備の導入に使える税制優遇制度の中小企業経営強化税制について解説をします。
中小企業経営強化税制では、即時償却または税額控除が使えますので、詳しくお伝えします。
節税の仕組みは少しわかりづらいですが、かみ砕いて解説しますのでご安心ください。お時間がない場合は、動画(5分)ををご覧ください。
中小企業経営強化税制制度を解説する明電産業グループは、補助金と一緒に税制優遇制度を使った提案をします。理由は設備の導入費用を大幅に減らすことができるため、投資回収期間がとても短くなるからです。
節税ではなく補助金をお探しの場合は、お気軽にご相談ください。
中小企業経営強化税制の概要
中小企業経営強化税制とは、省エネや再エネ設備に使える節税の制度です。
現在の申請期限は2025年(令和7)年3月31日までですが、2027年(令和9年)3月31日まで延長される予定です。2024年8月に経済産業省の概算要求の発表があり、申請期限の延長を要望しています。
中小企業経営強化税制には、おもに3つの制度が用意されています。
- ①中小企業経営強化税制(中小企業庁)
- ②中小企業投資促進税制(中小企業庁)
- ③カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(経済産業省)
省エネや再エネ設備の導入で使う場合は、①中小企業経営強化税制が一番使い勝手が良いです。
当社では、補助金と中小企業経営強化税制のセットで提案します。もしも補助金や節税制度の申請で困っているのであれば、お気軽にご相談ください。
即時償却と特別償却について
中小企業経営強化税制には、即時償却と税額控除の税制優遇制度があります。
即時償却は減価償却をせずに一括償却ができるので、利益を圧縮できます。つまり、法人税を減らすことができます。
税額控除は、設備導入費に対して10%の控除を受けることができます。つまり、直接的に節税ができます。
即時償却と税額控除もメリットとデメリットがあります。このあとは、即時償却と税額控除にについて詳しく解説します。
設備を購入した場合、減価償却で経費計上される
設備を購入した際は長年にわたって使用することとなります。購入費用を購入した年に経費として計上するのではなく、複数年にかけて経費に計上していくことになります。
このように、複数年にわたって経費計上をすることを減価償却と言います。
減価償却期間は、設備の種類・どの項目に経費計上するかにより異なります。減価償却期間の一例をご紹介します。
- 照明器具:15年
- 業務用エアコン:6年or13年or15年
- 変圧器:15年
- 太陽光発電:17年
例えば太陽光発電であれば、17年間かけて経費計上させることとなります。
法人税は、利益に対して一定の割合で課されるものとなります。経費が多い方が利益が少なくなり、その分法人税が少なくなります。
仮に、太陽光発電設備を1,700万円で設置した場合は初年度の経費は100万円です。太陽光発電設備の償却期間は17年ですので、1,700万円÷17年=100万円です。(定額法の場合)
設置費用自体は初年度に1,700万円になりますが、経費計上は100万円になります。
法人税を30%とすると、法人税の削減額は、100万円×30%=30万円分となります。
中小企業にとって、設備投資は投資した年に負担が大きくなります。なるべく法人税を少なくして、その負担を減らす制度が税制優遇となります。
税制優遇制度以外の導入コスト削減には、補助金が有効です。補助金についてはまとめページをご覧ください。
即時償却のメリット:一気に経費にすることができる
即時償却のメリットは、設備投資金額を初年度に一気に経費として計上できるしくみです。
即時償却のメリット
即時償却のメリットは、設備導入の1年目に手元に残るお金が多くなります。
- 法人税を少なくすることができるため 、キャッシュフローが良くなる
- 節税効果を早い段階で得られるため、投資回収期間が短くなる
その分、他の設備投資や社員の福利厚生にお金をかけることができます。
即時償却のデメリット
即時償却のデメリットは次の通りです。
- トータルの節税効果は減価償却と変わらない
- 自己資本比率が悪くなる可能性がある
経費計上できる額が変わるわけではありませんので、長年にかけて経費計上することによる法人税の減額分は変わりません。
設備を所有することになるため、会社の総資産が増えます。しかし即時償却すると一気に経費計上することになるため、利益が減ることになります。
利益が減ってしまうと自己資本比率が悪くなるため、借入能力の制限や投資家・取引先からの信頼低下につながる可能性があります。
税制優遇を使う際に、自社の経営状況を見て即時償却を活用するか検討するようにしましょう。
即時償却の適用条件
即時償却の適用条件は次の通りです。
- 青色申告を行っている中小企業者等※であること
- 一定の設備(設備の要件・金額下限額)であること
- 経営力向上計画の認定を受けること
- 計画に沿って設備を新規導入すること
資本金もしくは出資金が1億円以下の法人と、それ以外の法人または個人事業主で、常時使用者数が1,000人以下の事業者、協同組合等
電気業や水道業、映画以外の娯楽業など、対象外となる業種もありますので注意してください。
具体的な節税効果
即時償却した場合と、減価償却した場合の節税効果の違いを見てみましょう。
1,000万円の設備を購入したとして、減価償却は5年間定額で経費計上し、法人税の実効税率を30%とします。
【減価償却の場合】
年度 | 経費計上額 | 節税額 |
---|---|---|
1年目 | 200万円 | 60万円 |
2年目 | 200万円 | 60万円 |
3年目 | 200万円 | 60万円 |
4年目 | 200万円 | 60万円 |
5年目 | 200万円 | 60万円 |
合計 | 1,000万円 | 300万円 |
【即時償却した場合】
年度 | 経費計上額 | 節税額 |
---|---|---|
1年目 | 1,000万円 | 300万円 |
2年目 | 0円 | 0円 |
3年目 | 0円 | 0円 |
4年目 | 0円 | 0円 |
5年目 | 0円 | 0円 |
合計 | 1,000万円 | 300万円 |
減価償却の1年目の節税額は、60万円です。即時償却の1年目の節税額は、300万円です。
設備導入の1年目だけを見れば、節税の差が240万円なので節税効果は非常に大きいといえます。しかし、2年目以降の減価償却の場合は毎年60万円の節税となりますが、即時償却の節税効果はありません。
1年目に一気に節税効果を得るか、毎年節税効果を得るかの選択となります。
税額控除:設備取得額の10%の控除ができる
税額控除のメリットは、設備取得額の10%の直接控除ができることです。
控除額は法人税額の20%を限度となりますが、控除しきれなっか分は翌年(のみ)に繰り越すこともできます。
控除額の計算方法はとても単純で、設備取得額に10%をかけた金額です。
(例)1,000万円で取得した場合、控除額は100万円
税額控除のメリット
設備の取得額から直接10%の控除になるので、節税に直結します。
税額控除のデメリット
企業の利益が出ていない場合、節税効果が少なくなります。しかし税額控除の場合を利用した場合には、控除できなかった金額を翌年にのみ繰り越すことが可能です。
長期的な目線で見れば、節税効果があるといえます。
利益が出ていない場合には、節税効果が少なくなることがある(税額未控除部分の繰越しは翌年まで)
特別償却のメリットは、設備投資金額を初年度に経費を上乗せ計上できることです。
特別償却では、通常の減価償却を超えて減価償却費の計上を特別に認めるしくみです。
特別償却は最大で30%までと決められていますので、最大で所得金額の30%分を上乗せして経費計上する、つまりその分の法人税を取得年度に節税できることとなります。
中小企業経営強化税制目的や利用条件について
中小企業経営強化税制とは、設備投資の際に使える節税対策です。
法人税について即時償却又は取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択適用できる、中小企業向けの税制優遇制度です。
中小企業経営強化税制の申請期間は、2025年(令和7年)3月31日までです。しかし2024年8月に経済産業省が申請期間の延長を要望しています。
中小企業経営強化税制の目的・概要・利用条件について
中小企業経営強化税制の目的は、設備投資の初期投資の費用負担を軽減することです。
具体的には、対象となる設備が4つに分かれており、それぞれ一定の条件があります。
別の目的には、設備投資を通して、中小企業の経営力を上げることがあります。中小企業経営強化税制を活用するためには「条件に合った設備及び器具への交換」「経営力向上計画を作成し、今後の対策を立てること」が必要となります。
【対象となる4つの設備分類】
類型 | 要件 |
---|---|
生産性向上設備(A類型) | 生産性が、旧モデル比平均1%以上向上する設備 |
収益力強化設備(B類型) | 投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 |
デジタル化設備(C類型) | 可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備 |
経営資源集約化設備(D類型) | 修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備 |
4つの類型から、導入する設備の分類を確認します。
太陽光発電・蓄電池・照明・空調・変圧器等はA類型に入ります。
このA類型の要件を満たすためには、購入予定の設備が「生産性が、旧モデル比平均1%以上向上する設備」でなければいけません。
生産性が1%向上することを証明するためには、導入設備のメーカーから根拠資料を入手する必要があります。そして設備を管轄する工業会に証明書をもらう必要がありますので、メーカーへの依頼が必要となります。
対象設備がどの項目で計上するかによって、下限額が決まっていますので注意しましょう。
【下限額】
対象設備 | 下限額 |
---|---|
機械装置 | 160万円以上 |
工具 ※A類型の場合、測定工具又は検査工具に限る | 30万円以上 |
建物付属設備 | 60万円以上 |
ソフトウェア | 70万円以上 |
太陽光発電・照明・空調・変圧器等は、機械設備もしくは建物付属設備に当たります。
まずは、工業会の証明書発行依頼。その後経営力向上計画の作成が必要
中小企業経営強化税制で、A類型を活用する流れは次の通りとなります。
- メーカー(工事店)に工業会証明書の発行を依頼する
- 工業会証明書が発行されたら、経営力向上計画を作成する
- 経営力向上計画を担当省庁に提出し、認定をもらう
- 設備取得(工事含む)
- 所轄の税務署での税務申告時に、納税書類に工業会証明書、計画申請書及び計画認定書を添付提出する
経営力向上計画の認定をもらってから設備取得が原則となります。しかしコロナ禍時の例外が現在も適用されており、設備取得の60日以内に計画の認定をもらえれば良いことになっています。
工業会の証明書や認定を得るためには一定の時間がかかりますので、早めに取り掛かるようにしましょう。
経営力向上計画について
経営力向上計画は、事業分野により提出する省庁及び内容が異なります。
まずは自社がどの分野に該当するのか、それに合わせた内容は何かを確認するようにしましょう。
事業分野検索ページ(独立行政法人統計センター公式ホームページ)
次に自社の事業分野に合わせた指針を確認する必要があります。
「事業分野別指針」「基本指針」ホームページ(中小企業庁公式ホームページ)
実際に計画書に記載する主な内容は次の通りです。
- 現状認識について:自社の事業内容や経営状況・市場の状況など
- 経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標
- 軽力向上に向けた実施事項
- 取得する設備内容
目標値は達成できなかったからといってペナルティがあるわけではありませんが、自社の分析や実施内容、今後の計画を練った上で作成をし、現実的な目標値になるようにしましょう。
税制優遇制度を使った事例が多数あります
明電産業グループは、税制優遇制度を使った事例が多数あります。
太陽光発電・照明・空調・変圧器等や、蓄電池設備であれば、施工と補助金申請と税制優遇制度の組み合わせが、コスト削減や節税対策には最適な方法です。
税制優遇制度を使った場合の効果は、事例をご覧ください。
税制優遇制度を使った事例を見る
令和9年度3月31日(予定)まで。すぐに準備を進めてください。
中小企業経営強化税制の期限は、2027年(令和9年)3月31日(予定)までとなります。
即時償却は、初期費用を抑えて投資回収期間を短縮させることができる制度です。
太陽光発電の設置、業務用エアコン・変圧器・照明の交換を予定されている方は、早めに検討することをお勧めします。
作成方法や内容について、ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。