雷が多い時期は、太平洋側は4~9月、日本海側は10~3月です。
太平洋側は、夏に急な夕立と共に落雷が起きることが多くありますが、雷による被害は予測が難しく、特に中小企業にとっては大きなリスクとなります。
このページでは、中小企業向けに、雷被害のリスクを軽減するための方法についてお伝えします。
雷が落ちるとどのような被害につながるの?
雷が落ちることによる被害は大きく、次の3つがあります。
- 火災
- 人的被害
- 電子機器や設備の故障
火災・人的被害は、直接建物や人に落雷があることによる被害となりますが、雷による被害は直接落雷がある場合にとどまりません。
落雷が起きると、「雷サージ」が問題となります。
雷サージとは、過電流・過電圧のことで、通信線や電源線などを通って屋内に侵入することです。
そうすると、非常に大きな電流が流れることになり、屋内の設備の故障につながります。
雷サージの流入経路は次の3つです。
- 直撃雷:直接アンテナや電源線などに落雷があり、非常に大きな電圧が発生し、施設内の設備に流入
- 誘導雷:樹木や建物への落雷が、近くの配電線に電圧が誘導され施設内の設備に流入
- 逆流雷:違う場所で起きた雷が大地を経由して電源線に流れ込み施設内の設備に流入
直接的な被害(火災・人的被害)は直撃雷からとなりますが、雷の被害のうち、直撃雷よりも誘導雷や逆流雷の方が圧倒的に多く、施設の状況によって、それぞれに合わせた対策をする必要があります。
企業における落雷の影響と対策
一般住宅においても落雷の影響により、家電製品の故障等の影響がありますが、企業にとってはさらに深刻になる可能性があります。
ここでは、主に3つ、「事務所・工場・太陽光発電」について、影響と対策をお伝えします。
①事務所
事務所ではパソコンを筆頭に多くの電子機器が使われており、それらは電源だけではなく通信線もつながっています。
こうした機器は低圧電源に対応するため、雷サージに弱く、故障に繋がります。
そうすると、データの消失等にもつながり、物理的な被害以上に大きな影響が出ます。
事務所の雷被害対策
各電子機器の電源、LANケーブルにに対してSPDを設置するのが有効です。
SPDとは、雷サージ防護デバイス(surge protective device)のことで、日本語では「避雷器」とも呼びます。
SPDには、「電源用SPD」「通信用SPD」があり、電源線と通信線に適切に取り付けることで、雷サージがSPDを経由してアースなどに流れ、安全に地中へ放出されます。
電源タップなどに設置できるSPDもありますので、それであればすぐに対策が可能ですが、それだけでは不安です。
分電盤に電源用SPD、通信線(LANケーブル等)に通信用SPDを設置した上で、各電気機器にSPDをつけると、雷サージ対策防止につながります。
②工場
工場の場合、広大で回りに高い建物がない場所に設置されていることが多いことから、直撃雷の被害を避けるためには避雷針が必要となります。
火災が起きてしまった場合、原材料の内容によっては、非常に大きな問題につながる可能性があります。
また、誘導雷・逆流雷により設備が故障してしまうと、その損失だけではなく、生産活動がとまることによる被害も深刻となりえます。
工場の雷被害対策
直撃雷の対策として避雷針の設置が有効です。
また、誘導雷・逆流雷の対策としてSPDの設置が有効ですが、キュービクルから各建物へと系統がつながっていますので、キュービクルにSPDを設置した上で、各分電盤にもSPDを設置することで、設備の被害を防止します。
発注や生産管理が止まらないようにするためにも、通信用SPD、電子機器に対してもSPDをつけるようにしましょう。
③太陽光発電
電気代高騰対策・脱炭素化に向けて太陽光発電システムを設置している企業が増えています。
太陽光発電は、落雷による被害を受けやすいと言われています。
理由としては、高い屋根の上や、広大な何もない平地に設置することによる直撃雷の被害もありますが、特に誘導雷による被害が多く報告されています。
特に発電システムの一つであるパワーコンディショナーはパネルからの直流電流、施設への交流電流、通信制が集中しており、被害を受けやすい装置となります。
パワーコンディショナーが故障すれば、発電ができなくなります。
太陽光発電の雷被害対策
一定規模以上の太陽光の場合は、直撃雷の対策として避雷針の設置が有効です。
避雷針を設置することで、パネルなどの物理的な破損を防ぐことに繋がります。
また、SPDの設置も必要ですが、パワーコンディショナーは直流と交流の両方があるため、それぞれに適した電源用SPDを設置する必要があります。
被害が出る前に雷対策を
火災保険等で、物理的な被害やそれにより生じた利益の損失を補償してもらうことはできますが、休業している間の取引先への信頼度の低下、復旧に伴う従業員の負担増など、様々な影響が考えられます。
被害が出る前に対策を行うことで、そういった悪影響を防ぐことができます。
本格的な雷シーズンが来る前に、雷災害に対する対策を講じることをお勧めします。
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