【環境省】中小企業にも影響するSBTとは?わかりやすく徹底解説

「SBTを気にすべきは大企業だけ」の誤り

今回お送りするコラムは「SBT」について、どういったものか、今後どうするべきか、中小企業様の観点からお伝えします。

ただ、先に申し上げておきますが、「SBTとは何か」を解説していくにあたり、前半はスケール感の大きい話で、少し遠い世界の事のように思えてしまうかもしれません。
これは、SBTの理念が、地球全体での気候変動に対して何ができるか、という、非常に大きな規模を想定した問題提起に由来している為です。

ただ、時間差はあるものの、必ず中小企業様も考えなければならない時代がやってきます
その時に考え始めるのではなく、今から心構えをしておく事がとても重要です
SBTとは何か、知らずに損をする前に、当コラムにしばらくお付き合い頂き、知識を深めて頂く一助となれば幸いです。

 

SBTとは

SBTとは、「Sience Based Targets」の頭文字を取った略称です。
直訳すると「科学的な根拠に基づく目標」といった意味になります。

 

 

 

 

SBTが目指す理念をもう少し細かく述べると、 「企業・国家が気候変動緩和・防止に向けて取り組む目標」といえます。
その主な内容は、2015年にパリ協定において制定された、いわゆる「2℃目標」です。

 

 

 

 

 

 

 

ここで、簡単ではありますが、パリ協定についてもおさらいをしておきましょう。

パリ協定とは、2015年に開催された「COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)」で提唱され、主要各国の批准を経て、翌2016年に発効された、気候変動対策の国際的な枠組みです。
1997年制定の京都議定書の後継にあたり、発展途上国も含めた主要排出国全てが対象とされたことで、公平性と実効性を確保した画期的な枠組みでした。

近年、アメリカ前大統領トランプ氏が脱退を表明したことで物議をかもした後、現大統領のバイデン氏が復帰を表明したことが記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

SBTとは、パリ協定2℃目標を達成する為の、企業等による中長期的な目標設定、及び、その達成に向けた具体的な取り組みを含む、国際的なイニシアチブ(≒構想)を指します。

必然的に温室効果ガス(GHG)の排出削減が目標の中心テーマとなります。

以前にコラムで取り上げたTCFDと近しい考え方を持つ枠組みといえますが、TCFDは金融市場が主体となって企業に気候変動関連情報の開示を求めるのに対して、SBTは認証企業が主体となって温室効果ガスの排出削減目標を設定する、という点が異なります

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SBTの運営と認証手続きについて

SBTは、主に4つの国際機関によって共同運営されています。

4つの機関は、CDP・UNGC・WRI・WWFという団体です。

いずれの団体も、気候変動を含む環境問題全体への取り組み推進を目的としている国際的な団体です。

SBTの認証手続きは、これらの団体が、申請企業が提示した気候変動対策目標について、適切かどうかを審査します。
提示された目標が適切と認められた場合に、提出企業に対して認証が与えられる仕組みです。

認証を受けた企業は、年1回、二酸化炭素排出量と削減状況を報告し、定期的に目標の妥当性を再確認することが求められます。

2022年8月現在で、1,604団体が認証済み、2年以内の認定取得宣言(コミット)団体が1,861団体、計3,465団体となっています。
この内、日本企業では、認証企業233社、コミット企業56社、計289社にまで拡大しています。

 

SBT認証を得る事のメリット (どちらかというと大企業向け)

前項まで、SBTとは何か、どのように認証を取るか、について解説してきました。
ここでは、企業がSBT認証を得ることによるメリットについて解説していきます。
直接的には大企業向けの項となってしまいますが、間接的に中小企業様にも影響があることを理解する為にも、知っておいた方が良いでしょう。

ESG投資の呼び込みに効果的

コラムでも度々取り上げている「ESG投資」という考え方。
投資家の投資判断基準として、財務状況以外の観点を重視した投資手法です。ESG投資市場規模は拡大を続けており、世界で運用される試算総額の3分1に上る見込みとも言われています。
特に「環境=Environment」要素は重視される傾向にあります。

企業がSBT認証を取得することで、投資家含むステークホルダーに対して、明確に「環境配慮経営≒ESG経営」を示すことができ、結果、投資家からの資金調達において有利に働く可能性があります。

CDP質問状への対応に有利

CDPは、先に述べたSBT運営団体の1つです。主な活動の1つに、大手企業・国家に対して、環境への取り組みに関する「質問状」を送り、回答内容に応じた一種の「ランク付け」を行うものがあります。
この、CDP質問状による「格付け」は、公平な判断基準としての国際的な地位を確立しています。

SBT認証の取得は、CDP質問状への回答にも関連しており、ランク査定上の加点要素とされ、かなり有利なります。
ランクが上がれば、必然的にESG投資の観点からも良い効果が生まれる、という流れです。

企業価値の向上

SBT認証は、明確な環境配慮の姿勢として、企業イメージの底上げに寄与します。
未取得の競合他社に対して差別化を打ち出すことができると共に、エンドユーザー向け訴求力・発信力の強化にも繋がります。
上記にESG投資と同じように、エンドユーザーの購買意欲にもESG志向が強く顕れてきています
SBT認証は、商品競争力の強化にも繋がっていく可能性があるのです。

この項では、企業がSBT認証を得ることの主なメリットを解説しました。
ESG投資が拡大している時代において、SBTをはじめとした環境系イニシアチブへの取り組み方は、単なる社会貢献の枠を大きく超えている事はお解り頂けたかと思います。
次項では、この流れが、中小企業にも無縁ではないことについて、SBTの対象分野を中心に解説します。

 

中小企業も無縁ではない理由  「SCOPE」について知る

SBTにおける削減対象は、「GHGプロトコル」という温室効果ガス排出量算定の国際基準に準拠しています。
ここで言う「プロトコル」は、政治・ビジネスシーンで使われる「手順」の意味です。

つまり、「CO2排出削減量を測定するにはそもそも測定ルールを決めないといけない」という意識から策定された、CO2排出量算定のルール・考え方のようなものです。
制定については、先ほど運営団体として名前も挙げた「WRI(世界資源研究所)」が関わっています。

「どのように」「どれくらい」のCO2を排出しているかを算定する公平な基準として評価を確立しており、いまやSBTに限らず様々な環境系イニシアチブがGHGプロトコルを採用しています。

GHGプロトコルの中核を為す重要な考え方が「SCOPE(スコープ)」です。
自社を中心として、サプライヤー・ユーザーも含めたサプライチェーン全体を対象とし、温室効果ガスの排出経路に応じて大きく3種に分類しています。「SCOPE1」「SCOPE2」「SCOPE3」と呼称されます。

SCOPE1 自社の事業活動における、燃料使用による、直接的なCO2排出

SCOPE2 自社の事業活動における、電気等使用による、間接的なCO2排出

SCOPE3 上記以外の間接的なCO2排出(自社のみならず、仕入先やユーザーの排出量も含む)

 

このSCOPEという考え方は非常に重要です。
なぜなら、「自社の事業活動がどのくらいのCO2を排出しているか」を知る為に、自社以外の排出量も知る必要があるからです

もうお判りでしょうか。
仮に、御社が部品を供給している取引先がSBT認証を受けることになった場合、「SCOPE3:サプライヤーによるCO2排出量」の報告が求められる可能性があるのです。
さらには、SCOPE全体=サプライチェーン全体でのCO2排出量削減を図る為に、取引先からCO2排出削減の取り組み強化を求められる可能性もあります

ここにおいて、「SBTは中小企業には無縁」とは言い切れないことがお解り頂けるかと思います。

では、日本のSBT認証企業は、実際、SCOPE3について、どのようなスタンスをとっているのでしょうか。
下記に日本のSBT認証企業の内、サプライヤーに対してCO2削減に関する要請を行っている企業を一部紹介します。

上記は一部に過ぎません。
すでにSBT認証を受けた企業は、今後継続的な取り組み報告の為、SCOPE3におけるCO2排出量を可視化しようと動いています
要請に応じないサプライヤーと応じるサプライヤー、どちらと取引しようとするかは火を見るより明らかです。

もしかしたら明日には、御社ユーザー、あるいはさらにその先のユーザーから、SBT目標の設定を求める通達が来るかもしれません
その要請に応えられない場合、最悪、取引終了の恐れもあります。
その時に慌てても遅いのです。

 

中小企業はSBTとどう向き合うべきか

ここまでで、SBTが中小企業様にとって無関係ではないことはご理解頂けたかと思います。

では、中小企業様は、どのようにSBTに向き合っていけばよいのでしょうか。
本項では、今、考えるべきこと、すべきことを、段階的に整理します。
この項は、今後、SBT目標の設定だけではなく、脱炭素取り組み・ESG経営推進全般に役立つ結びと致します。

STEP1 自社のSCOPE1・2全体像を把握しましょう

まず、中小企業様はSCOPE1・2に注目しましょう。
なぜなら、SCOPE1・2は、自社内で完結できる為、比較的わかりやすい分野言えるからです。
また、自社のSCOPE1・2は、御社取引先にとってのSCOPE3の一部にあたり、今後の段階の基礎にもなります。

自社で使用するSCOPE1・2の種類を分けて、それぞれ期間ごとに使用量を集計する事が大事す。
月間使用量の集計が好ましいでしょう。
特に、SCOPE2の主要品目である「電気」は、どの企業でも使用する普遍性の高い品目です。
電力会社からの請求明細等から、電気使用量を集計するだけで済む為、把握がしやすい分野となります。

STEP2 自社のSCOPE1・2を分析しましょう

当たり前のことですが、知るだけではCO2排出量は減りません。
ですが、知らないと減らし方すら分かりません。
その為に、STEP1で把握した全体像を分析し、「どこでどのくらい使っているか」をできる限り突き詰めましょう

SCOPE1は、どの設備でどのくらい燃料を使ったという記録が取りやすい為、把握がしやすいかもしれません。

逆に、SCOPE2の電気は少し厄介です。専用の測定機器等を付けることで部屋ごとやエリアごとの集計はできても、器具別等の集計・分析は難しいかもしれません。
そんな時は専門業者に相談するのがおすすめです。
器具の種類や使用状況等で、ある程度は予測値を算出することができます。現地調査を行うことで精度が上がる事もあります。

STEP3 自社のSCOPE1・2の削減計画を立てましょう

自社のSCOPE1・2が把握できたならば、次は削減手段の検討です。
当然費用がかかることですので、費用対効果も考えながら、設備更新・導入を検討するのがオススメです。

以下に、普遍性の高いSCOPE2の削減手段をご紹介しましょう。

・照明 SCOPE2削減

まだ蛍光灯や水銀灯を使用している場合は最優先レベル。
LED化することで、該当設備の電気使用量(=CO2排出量)を半分以下にできる可能性あり

・空調 SCOPE2削減

10年以上使い続けている場合は検討の余地あり
普遍性の高い器具であるものの、使い続けることで効率は落ちていく。

・自家消費太陽光 SCOPE2削減

再生可能エネルギーの自家消費、という手法でSCOPE2全体の削減に寄与する。
CO2排出量の実質的な削減効果は非常に大きい

これらはあくまでも一例です。
お解り頂けると思いますが、CO2排出量削減は固定費削減と近い意味となります。
このSTEPは、脱炭素取り組み強化であると共に、経営環境の改善にも繋がることを知っておいてください。

STEP4 取り組み状況を発信しましょう

発信といっても、難しい話ではありません。
口コミレベルでもよいので、周囲にCO2削減に取り組んでいることを知ってもらうことが大事です。

目的は2つあります。
1つ目は、地域含めたステークホルダーに努力を知ってもらい企業価値を高めること。
2つ目は、最終的な自社にとってのSCOPE3算出の布石としてです。

「自社のSCOPE1・2≒取引先のSCOPE3」ということは先ほど述べました。
つまり、理論上は、サプライチェーンに関わる全ての企業が、それぞれ自社のSCOPE1・2を算出できたなら、それらの企業全てのSCOPE3大部分が算出できるはずなのです。

これが最終的にはSBT等の環境系イニシアチブに適合していく近道と考えられます。

現段階では、中小企業様にとってはSCOPE3の正確な算出はまだ壁が厚いです。
無理せずできることから、の考え方で、自社のSCOPE1・2を削減することが、最終的にはサプライチェーン全体のCO2削減という課題に対抗し、競争力を保持することができるのです。

ここまで4段階に分けて考えてみました。この様に整理してみると、それほど難解なことではないと感じるのではないでしょうか。
再度申し上げたいのは、いざという時に慌てることがないように心構えをしておく、ということが最も大事なことなのです。

上記各ステップは、今後、SBT目標の設定だけではなく、脱炭素取り組み・ESG経営推進全般に役立つ、汎用性の高い考え方です。
皆様の今後の方針策定の一助となれば幸いです。

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