太陽光発電は「売る」より「使え」!
「太陽光発電=売電」は時代遅れ?
太陽光発電は世の中にかなり浸透した印象があります。今後、新築住宅への設置義務化も検討されているほどです。
「最も身近な再生可能エネルギーという地位を確立した」といっても過言ではないでしょう。
しかし一方で、その運用方法について詳しく知っている方は意外と少ない様に感じます。
太陽光発電は「創った電気を売るもの」という、「売電」一択と考えている方がまだかなりいらっしゃるようです。
創った電気を売る「売電型太陽光」は、太陽光の普及促進を目的として2012年に設けられたFIT制度を背景として
爆発的に普及しました。
しかし、太陽光を含む再生可能エネルギーを取り巻く状況は大きく変化しています。
今、売電型太陽光は事業目的の大規模太陽光発電所以外では、主流の座を明け渡しつつあるのです。
代わって主流になりつつあるのは、発電した電力を売らずに使用する「自家消費型太陽光」。
今回のコラムでは、太陽光発電の最新状況と、主流となりつつある「自家消費太陽光」について、
補助金の動向と共に解説します。
なぜ自家消費型太陽光が主流になっているのか?
なぜ、自家消費太陽光が主流となりつつあるのでしょうか。 主な要因は2つあります。
「①売電価格の下落」と、「②電気代の値上がり」です。
<①売電価格の下落による売電型太陽光の価値低下>
下の図は、FIT制度における、売電価格の推移です。
2012年に始まったFIT制度は、太陽光出力10kw未満は10年間、10kw以上は20年間、一定価格で売却できる制度です。
上記を見てわかるように、その売却価格は下落の一途を辿り、今年発表された価格は約10年前から比べて半額以下
となっています。
なぜこの様に売電価格が下がるのか。 これには、FIT制度の売電価格を支える「再エネ賦課金」が深く関わっています。
再エネ賦課金は、電気を使用する全ての需要家(個人・企業問わず)から、電気料金と共に徴収される資金です。
この再エネ賦課金がFIT制度における電気の買取原資となっているのです。
FIT制度スタートによって爆発的に普及した売電型太陽光、それは、総売却額の爆発的・持続的な増加と同義です。
買取の原資には限界がある為、必然的に、後発になればなるほど売却単価を下げざるをえないわけです。
「買取単価が下落すれば売電型太陽光の魅力が薄れてしまい、相対的に、自家消費型太陽光の魅力が高まっている」
という構図になります。
<②電気料金の値上がりによる自家消費型太陽光の価値上昇>
1つ目の理由「売電単価の下落」は、売電型太陽光の価値が下落し、”相対的”に自家消費型太陽光の価値が上がる要因でした。
2つ目の理由「電気代の値上がり」は、自家消費型太陽光の価値を”絶対的”に上げる要因となります。
下記表は、電気料金平均単価の推移を示したグラフです。
2010年の東日本大震災後、主に原油価格に連動する形で値上がりしている事が見て取れます。
その理由は、現在の日本の発電源として最も多くの割合を占める火力発電が、原油を筆頭とした化石燃料を使用する為です。
電気を作るのに必要な「原料」が値上がりすれば、必然的に生産物である電気も値上がりする、というからくりですね。
直近では、コロナ禍・ウクライナ情勢に端を発した、LNGの値上がりが大きな影を落とし、電力卸売市場のスポット価格の上昇に歯止めが利かない状態です。
化石燃料の多くを輸入に依存する日本は、国際情勢の影響も受けやすいと言えます。
また、先ほどの項目でも述べた再エネ賦課金も、電気料金総額の値上がりに大きな影響を及ぼしています。
下記グラフは、再エネ賦課金の推移です。
一見してわかるように、再エネ賦課金の上昇率は尋常ではありません。
FIT制度開始時の再エネ賦課金は0.22円/kWhでした。
10年経過した2022年現在の最新状況は、なんと3.45円/kWh。実に15倍以上となり、1kWhあたり3円以上の値上がり幅です。
仮に、高圧契約で月間10,000kWhの電力消費の場合、10年前と比べて月間3万円以上、年間36万円以上のコスト増です。
さらに恐るべきは、FIT制度の固定買取期間がまだ10年残っている案件が多い、という点。
これが指し示すのは、再エネ賦課金の上昇傾向が今後10年は続く見込みが強い、という事です。
この再エネ賦課金の値上がりと、先述の電気料金そのものの値上がりがダブルパンチとなり、
固定費の増加という経営リスクに直結しているのが現状なのです。
こうなってくると、「使う=購入する電気」をいかに減らすかが重要になってくるのは言うまでもありません。
その為、照明のLED化や、空調の高効率化に代表されるような、省エネ設備導入・更新に加えて、
「太陽光で創った電気を使う」という自家消費型太陽光が脚光を浴びているのです。
もちろん、自家消費型太陽光の隆盛の背景には、他にも要素はあります。
・「再エネを使う」という環境・社会貢献の側面
・「災害時の緊急電源」というBCP対策の側面
これらも含めて総合的に判断された結果、自家消費型太陽光が主流となっている、と言えるでしょう。
ここまで、自家消費型太陽光が主流となっている理由について解説しました。
次項では、そもそも自家消費型太陽光とは、という事について、おさらいとして解説したいと思います。
自家消費型太陽光の特徴
そもそも、自家消費型太陽光とはどういった特徴をもっているのか、簡単に解説していきましょう。
自家消費型太陽光とは、文字通り太陽光発電システムで発電した電力を、売らずに自身で使用する仕組みです。
売電型は、創った電気を売却して収益を得ることを目的としています。
対して、
自家消費型は、創った電気を自身で使うことで、購入する電気量を削減する事が目的となります。
同じ太陽光であっても、効果を得る方法論が全く異なることがお解り頂けるでしょうか。
売電型の効果が「売電単価」に依存するのに対して、自家消費型の効果は「電気購入単価」に依存することとなります。
前項でも少し触れましたが、化石燃料価格や国際情勢、再エネ賦課金の動向といった外的要因によって電気代が高騰すると、
売るよりも買う量を減らす方がメリットが出る可能性が出てきます。
売電型に無い特長は他にもあり、再生可能エネルギーの活用という観点から考えると、自家消費型の方がやや優れています。
少し複雑な話となりますが、発電した電力の「環境価値」がどこに帰属するか、という観点がポイントです。
売電型のほとんどが活用している「FIT制度(固定価格買取制度)」は、
買い取る際に「環境価値」も一緒に買い取られています。
環境価値とは、再エネ電力の内「再生可能」という付加価値部分、と言えます。 平たく言えば、FIT制度を使って売電することで、再エネを創った事実・権利のようなものも電気と一緒に手放すイメージです。
その為、売電型で発電してFIT制度で売却する場合、制度上は「当社は太陽光発電で環境貢献しています!」とは必ずしも言い切れないのです。 形式上は「太陽光で発電した」という「価値」を手放しているからですね。
余談ですが、FIT制度で買い取られた環境価値の帰属先は、FIT制度を支える再エネ賦課金の負担者=全需要家、となります。
その点、自家消費型は環境価値を手放さずに消費するので、「再エネ発電を活用して環境貢献中」という謳い文句が堂々とアピールできます。
昨今は「グリーンウォッシュ」と呼ばれる「見せかけの環境貢献」に対する注目の高まりもあり、環境価値の取引が以前よりも活発化している傾向があります。 環境貢献という面においても、自家消費型は隙の無い、優れた太陽光発電の形、と言えるかと思います。
自家消費型太陽光の特徴・メリットについては、サイト内ページでも解説しています。
もっと詳しく知りたい、という方はこちらもご覧頂ければ、と思います。
自家消費型太陽光のメリットと導入シミュレーション、補助金 (info-meidens.com)
補助金も自家消費型にシフトしている
ここまで述べてきた自家消費型太陽光の隆盛は、行政の施策にも影響しています。
その一端が、補助金政策に垣間見えます。
以下は、令和4年度実施の太陽光・蓄電池導入を対象とした補助金です。
環境省主管・全国対象、太陽光関連としては代表的な補助金の1つです。
.【対象者】 全国の民間企業など
.【対象設備】 太陽光発電設備(自家消費型)、蓄電池
.【補助額】 A 太陽光発電設備 4万円/kW
. (PPA又はリースで蓄電池導入する場合のみ5万円/kW)
. B 蓄電池 6.3万円/kW(上限 補助対象経費の1/3)
.【主な条件】 ① 自立運転機能(停電時にも必要な電力を供給できる機能)があること
. ② 太陽電池出力が10kW以上あること
. ③ 発電量の50%以上を導入場所の敷地内で自家消費すること
. ④ 費用効率性の上限 36,000円/t-CO2 など
こちらの補助金の詳細は、別コラムで解説しています。
詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
【審査テクニック公開】太陽光発電・蓄電池補助金 2022年度(ストレージパリティ補助金) (info-meidens.com)
注目すべきは条件③です。一定割合「自家消費する事」が要件として明記されています。
さらには、売電するとしてもFIT制度活用不可、となっており、非FITと呼ばれる安い売電価格を選択せざるを得ません。
売電できる規模の太陽光を増やす費用と、得ることができる非FIT売電金額が、釣り合うケースは稀と思われます。
必然的に条件④の費用効率性(≒対補助費用効果)も厳しくなっていくでしょう。
また、この補助金は採択制を取っており、表向き公開はされていないものの、審査時の判断ポイントとして売電ありのケースは不利に働く可能性があります。
上記の事から、実質的には自家消費型対象、と考えて差し支えないと思われます。
この様に、補助金行政も 太陽光=自家消費型、という視点にシフトしてきている事がお解り頂けたでしょうか。
結び 自家消費型太陽光の注意点
ここまで述べた様に、自家消費型太陽光は、電気代高騰・FIT買取価格の下落という社会情勢の変化に沿う特長があります。
しかし、自家消費型ならではの注意しなければならない事もあります。
それは「消費しきれない電気はできるだけ創らない」という点です。
食べきれない食事を作って残してしまうと、もったいない気持ちになりますよね。 自家消費型でも近しい事が言えます。
売電型と違って、「創れば創るだけ良い」ではなく、使える分だけをしっかり創る、という微妙なさじ加減が必要になります。
創りすぎた分は売る、という売電型と自家消費型のハイブリッド方式「余剰売電方式」の自家消費太陽光もありますが、一部・余剰分であっても電気を売る行為自体は補助金申請面で不利に働く事もあるので注意が必要です。
自家消費型太陽光には、
・「日中どのくらい電気を使っているか」と
・「どのくらい発電できるか」
の2点を踏まえた設計が欠かせません。
適切な規模の設計、創りすぎない様にする機器選定など、自家消費型太陽光の構築は、豊富な提案経験、
施工実績をもっている業者に依頼する事が肝心です。
明電産業グループでは、専門の設計・施工部門を設け、自家消費型太陽光の設計~施工まで、
一貫したサービスを提供する体制が整っております。
また、「脱炭素経営コンサル会社」として、
お補助金・優遇税制の申請支援も含めたオーダーメイドのご提案を行える体制も整っております。
もし今回のテーマである自家消費型太陽光に興味・関心が湧きましたらお気軽にご相談ください。
皆様の課題解決に向けた一助となれれば幸いです。
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