RE100・RE Actionとは?
脱炭素に向けた取り組みは、表からは見えにくい
菅前首相が2020年10月に所信表明演説を行った際、「脱炭素社会の実現」「カーボンニュートラル」といったキーワードを使って、強いメッセージを発信しました。
これを一つの契機として、「脱炭素」という考え方が、より広く、より多くの方に認知されていった様に思われます。
しかし、「脱炭素」と一言で言っても、切り口は無数に存在します。中には、何から手を着けていいかわからない、取り組んでいるけれど効果が出ているのか分からない、といった悩みを持った企業様もいらっしゃることでしょう。
エネルギー分野においても、エネルギーそのものを目にすることが難しい以上、脱炭素化に向けた取り組みは見えにくい部分を持っている、と言えます。
この見えにくい部分を、目標年度設定・年次報告等で可視化する事で、社会全体の脱炭素に向けた取り組みを推進する、という理念をもった枠組みが、「RE100」、「REAction」です。
RE100とは?
RE100は、イギリス本拠の国際環境NGO「クライメイトグループ」が創設した環境イニシアチブのひとつで、「RE100」は「Renewable Energy 100%」の頭文字を取っています。
RE100とRE Actionは、基本的な理念は同じで、いずれも「加盟企業が事業活動に使用する電力を100%再生可能エネルギー由来に転換する」事を目標としています。2050年を限度とした、企業ごとの自主設定した目標年に向かって、年次報告を行っていく点も同様です。
大きく異なる点は、対象となる企業の規模。
RE100の加盟条件は、年間消費電力が100GWh以上の企業。(日本では緩和規定あり、50GWh以上)
100GWhという電力量は、一般家庭1世帯当たりの年間消費電力を6,000kWhとした場合、およそ17,000世帯分に相当します。
これ程の電力量を使用する企業は必然的に巨大企業となり、一例を挙げるとアップル、グーグル、マイクロソフトといった誰もが知る企業や、日本ではソニー、楽天、セブン&アイホールディングス、積水ハウス等の有力企業の加盟が相次いでいます。
加盟にあたっては、遅くとも2050年までに事業活動に使用する電力を100%再生可能エネルギー由来に転換する目標を設定し、1年毎に取り組みの実施状況報告を行う必要があります。 目標未達成によるペナルティーはありませんが、取り組み状況が芳しくない企業が社会全体から厳しい視線を集めてしまうであろうことは想像に難くありません。
RE Actionとは?
RE Actionは、先述の通りRE100と同じく「加盟企業が事業活動に使用する電力を100%再生可能エネルギー由来に転換する」事を目標としています。
2019年10月に日本で発足し、グリーン購入ネットワーク(GPN)をはじめとした複数の団体が運営に携わっています。 RE100の創設団体であるクライメイトグループからも推奨されており、RE100を大企業向けとするならば、RE Actionは中小企業版RE100と言えるでしょう。
加盟対象は、年間消費電力量50GWh未満の企業の他、自治体、教育機関、医療機関など、RE100に比べてやや広範囲に。 2022年1月現在、222団体が加盟し100%再生可能エネルギー化の目標年を公表しています。
RE100と異なる点をまとめると、日本国内の団体が対象である事、加盟団体の規模(RE100加盟基準に達する大企業はRE100への参加が推奨されています)、加盟団体の種別が広範に渡る事、といった点となります。
RE Actionに加盟するメリット
ここまでで、RE100とRE Actionについて解説してきました。
では、なぜ今、RE100・RE Actionへの加盟が増えているのでしょうか。ここでは「加盟する意義」について考えたいと思います。
道義的理由
まず第一に、地球環境への配慮、という、道義的な理由は外せない点でしょう。
SDG’s(持続可能な開発目標)の13番目標や、昨年開催されたCOP26で議論が交わされた「気候変動対策」、この世界的な問題に対して、世間の耳目を集める大企業であるほど、取り組み姿勢を明確に打ち出す必要・責務が強く求められます。
この点において、対外的に目標年と取組報告を行っている事を示せるRE100への加盟は、大企業にとってはわかりやすい手法の1つと言えるでしょう。
ESG投資
企業の環境配慮は、道義的な範囲に留まらない、大きな意味を持ち始めています。
現在の投資家の潮流は、どの企業へ投資を行うか、あるいは投資を止めるか、その判断の一部に環境に対する取り組み姿勢を取り入れるものとなっています。
この、環境配慮を内包する考え方が「ESG投資」という考え方です。
ESG投資市場の拡大は、環境への取り組みが企業価値の判断基準としてより大きな意味を持ち始めている事を表しています。 ゆえに、企業は社会と市場に対し取り組み状況を分かりやすい形で発信する必要性に迫られているのです。
サプライチェーンの維持・獲得
ESG投資と直接関係のない中小企業においても、環境に対する取り組み姿勢は企業価値と無縁ではありません。
例えば、サプライチェーンの大元にある大企業が、ESG投資を背景として「サプライチェーン全体の脱炭素化」を図る事例が増えています。 実際の例として、RE100の加盟企業であるアップルは、仕入れ先にも100%再生可能エネルギーによる事業活動を求めています。
取り組み姿勢が不足していると見なされた企業は、サプライチェーンから除外されてしまう可能性が高くなるのです。
RE Actionへの加盟が、ステークホルダー全体に対して、脱炭素化取り組みの推進を表明する1つの手段として評価されている側面はあると思われます。
化石燃料の価格上昇リスクの回避
日本における電力は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に大きく依存しています。 また、新興国においてもエネルギー消費量は増加しており、有限資源である化石燃料の産出が減った場合、価格高騰が起こります。 実際に2021年後半~現在も、液化天然ガス(LNG)その他の化石燃料の価格高騰に起因し電力料金は上昇し続けており、この状況は更に続く可能性もあると考えられています。
事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことができれば、化石燃料の価格高騰の影響を受けることなく電気を調達することができ、経済的メリットが出るのです。
消費者・求職者から見た企業価値の向上
生活者の購買行動に関する意識調査※において、興味深い結果が出ています。
普段の購買行動で重視することは、「価格(85%)」「入手のしやすさ(78%)」「機能性・利便性(77%)」が上位を占める一方、
約7割の生活者が気候変動に配慮した商品を「価格が同程度、又は1割程度高くても購入したい」と回答し、更に購買経験のある生活者の内、9割は「継続して購入したい」と回答しており、気候変動に配慮した商品は、生活者にとって満足度が高いことが分かります。
また、こういった意識の変化は企業の人材採用にも似た状況が表れています。 国内外のグローバル人材を対象とした調査では「グローバル人材は、転職先を選ぶ際に SDGs等の取組みを59%が考慮に入れている」と結果が出るなど、生活者の意識・求職者の意識に大きな変化が生まれています。
この世間の意識変化に対応することも、永続的に成長していく上で必要不可欠な要素であるといえるでしょう。
※「気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査(CSVサーベイ2021年10月)」
結び ~脱炭素取り組みで企業価値を上げるには~
本コラムでは、RE100・REActionがどのようなものか、加盟する事の意義について述べてきました。
2つの枠組みに共通して言えることは、いずれも使用する電力を再生可能エネルギー100%にすることをコミットしていること。コミットメントを内外に発信することで、脱炭素化の取り組みが企業価値にも影響する、という事の一端はお伝えできたでしょうか。
RE100・REActionが推進する、「100%再生可能エネルギーへの転換」に至る手法は様々です。
ただし、両枠組みに加盟する事だけが全てではない事も合わせてお伝えしたく思います。
例えば、高効率機器交換による省エネ、自家消費太陽光で事業活動エネルギーの再エネ化、再生可能エネルギー100%電力の購入、など、企業価値を上げる脱炭素化取り組み手法は、他にも数多く存在します。
明電産業グループは、「脱炭素経営コンサル会社」として、お客様の悩みに合わせたオーダーメイドのご提案を行える体制が
整っております。脱炭素化取り組みにお悩みがある方はお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
最後に、我々明電産業グループでも、2021年10月に栃木県で4社目、同県宇都宮市では初となる、RE Actionへ加盟いたしました。
現在、100%再生可能エネルギー使用率100%切り替え期限2050年を最終目標として、各グループ・事業所の使用電力を、再生可能エネルギー由来電力へと順次切り替えています。
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